味仙台湾ラーメンの歴史

名古屋名物でリピーターが続出する有名な食べ物といえば味仙台湾ラーメン。最初に食べた時は驚くほどの辛さと食後の腹痛で「2度と食べない」と思っていたが、1ヶ月ほどすると、あの辛さ、味が恋しくなる。今回は、台湾ラーメン誕生のエピソードや“辛さ”や“リピート”の謎に関して書かれている国方学著「台湾ラーメン味仙の秘密」という味仙の魅力の本質について述べられた本を紹介する。

管理人サチアレ
管理人サチアレ

お盆の時期に帰省して、名古屋のソウルフード「味仙」を食べにいく方も多いのではないかと思いまして、再度記事をUPします。

本の目次を見ると、名古屋という街のことから、名古屋めしのこと、郭ファミリー・ヒストリーetc…など興味深い項目が並んでいる。その中で特に印象に残った「台湾ラーメンのこと」を要約してお伝えする。

名古屋ラーメンとは?

名古屋でラーメンといえば、台湾ラーメンか寿がきやラーメンが有名である。台湾ラーメンは名古屋で生まれ、唐辛子とニンニクを効かした豚ミンチを使って激辛に仕上げるレシピはどの店でも共通している。そして、名古屋人に広く愛されている。現在、名古屋市内にある約480軒のラーメン店のうち250店以上が台湾ラーメンを出している。

ネーミング考

なぜ台湾ラーメンと呼ばれるようになったのか。この麺料理を作ったのは名古屋・今池の台湾料理店「味仙」の郭明優さん。最初は店の内部の人たちが、小腹が空いた時に食べるように、台湾の坦仔麺をまねて作っていた賄い食のようなものだった。それを見た店の常連客が、「うまそうだな。おれに一杯作ってくれ」というので出してあげたら「これはうまい!」と気に入ってくれた。研究と試作を重ねていよいよ完成。「台湾人の料理人がつくったので台湾ラーメンでいいか」気軽にそう考えて、台湾ラーメンとした。昭和45年ごろ、郭さんが30歳ぐらいのことだった。こうして誕生した台湾ラーメンだが、各方面に強烈な印象を与えたようで、インターネットのない時代ながら、クチコミで広がっていた。

台湾ラーメン辛さの謎

台湾ラーメンが生まれてだいたい45年。熱々の辛いラーメンが若者の舌とハートを刺激して評判を呼んだ。「辛い」という遊戯的な要素もあるが、辛さをとっかかりにして「もう一度たべたい」「もっと食べたい」というドーパミン作用を引き起こしている。唐辛子の辛味は、三叉神経という痛みを感じる神経で受容される。強烈に辛いものを食べると、辛いというより痛いと感じる。つまり、辛みは不快をともなうものなのに、その辛さをわざわざ5倍、10倍と増やした料理を好む人たち。不快の反動として、そこに快感を感じる倒錯した喜びを得ているのだ。味仙の台湾ラーメンはただ辛いだけでなく旨みがある。辛味と旨みの融合がリピーターに変える。旨みはダシで決まる。日本料理でも中華料理でも、おいしさの基本はダシだ。動物系、魚介系、野菜系それぞれからダシが取れる。その調合の仕方によって、それぞれの店は料理の基本の味が決まる。味仙の台湾ラーメンは、鶏ガラからとったダシスープと、ニンニクと唐辛子の旨辛味と、豚ミンチの脂肪の3要素がお約束になっている。この要素がからまった中華麺=炭水化物を摂取すると、脳内にドーパミンが出て、扁桃体においしさ信号が届き、依存性をともなった病みつき症候群があらわれる。

発祥の地の謎

現在、郭家の長男の明優さんが今池本店、セントレア空港店、JR名古屋駅うまいもん通り店、大名古屋ビルディング店を経営。次男の茂淑さん家族が八事店、長女の麗華さんが矢場町店、四男の政良さんが焼山、日進、竹の山店をそれぞれ独立採算制で経営している。それらは中国台湾料理「味仙」という名だが、いわゆるフランチャイズ店でなく、5人の兄弟が親元から独立して出店している形になっている。FCなら本部のセントラル・クッキングされた商品を使うので、どの店で食べても同じ味だが、味仙の場合は兄弟各店で微妙に味が異なる。同じ台湾ラーメンでも、今池本店のスープが澄んでいてスッキリした旨辛味。辛さがマイルドで、透明感や上品さはさすがという感じ。他の味仙のは、スープの中に台湾ミンチが溶け込んで辛さ絶叫のジャンキー・ラーメンもあれば、塩味・みそ味の一風変わった台湾ラーメンもある。味仙の奥深いところであり、飽きのこないポイントになっている。

最後に、国方さんは味仙がなぜここまで大きくなったのか興味深い考察を述べている。

本店が今池にあるように、すべての味は名古屋の今池からはじまったということは大きな意味がある。今池という街は繁華街の一つであるが、ナンバーワンではない。台湾ラーメンが生まれたところはヤンキー街というか、やんちゃな街だった。そういう街で味仙は育ち、台湾ラーメンが生まれたことに大きな意味があるように思う。

感想

味仙というブランド、台湾ラーメンという看板メニューを作るまでの苦労や困難を知ると、味仙ファンとしてはより一層味仙が魅力的に見えてくる。国方さんの独特の考察も面白く、名古屋や今池という土地柄、人柄に台湾ラーメン誕生の要因を見出していることに共感できる。〇〇名物になるには、時間がかかるのはもちろんのこと、料理人の腕だけでなく、もっと深いところに(ヒト)に答えがあり、幾つもの点と点が線になって今の味仙に繋がっているだと感じた。

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